研究者、有識者らで構成される「老朽化マンション対策会議」(椎名武雄会長=日本アイ・ビー・エム名誉相談役)はこのほど、老朽化したマンション対策に関して「多数決による区分所有関係解消制度の創設」を中心とする提言を発表した。
現行制度では、マンションの改修・建て替えについては多数決により実行できるが、区分所有関係を解消し土地を売却して金銭で分配する方法は、民法に基づく全員合意による方法以外にない。そこで、議決権割合の3分の2以上の賛成での決議を可能とするよう提言しており、更に、民法の特別法である区分所有法ではなく、行政処分によるマンション建替え円滑化法の中で実施できるよう求めている。行政処分とすることで、「6カ月」の出訴期間が生じ決議安定性が増大するメリットがあり、訴訟となった場合も「違法性の在否」のみが争点となるため客観性が増すといった効用があるとしている。
区分所有関係の解消は、区分所有者の金銭負担や事業参画者がいないといった問題などが原因で建て替えが進まない場合、有効な手段だとされている。建物解体後の土地の売却資金により、住み替えに際して各人の資産状況に応じた多様な選択が可能となる。
同対策会議の福井秀夫幹事長(政策研究大学院大学教授)は、「国土交通省関係者には、この提言をもとにした骨子をまとめていただき、早期に国会へ法案として提出してもらいたい」と語った。